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この週末に修司への想いをさらに燃え上がらせて、月曜日に告白の返事をする気満々だったのに、家庭教師との勉強という障害が私の前に立ちはだかった。私は下がってしまったテンションを再度上げる為に、修司から告白されたシーンを頭の中で再現する。『ずっと涼夏の事が好きだった』ってセリフが頭の中で反響する。何度も反響させている内に体中が熱くなってきたので、私は制服を脱いでキャミソール一枚にショートパンツという夏用の部屋着に着替える。
とりあえず明日、家庭教師とやらに私の恋バナを聞いてもらおうと思えるぐらいには気持ちを上向きにする事ができた。その夜、私は頭の中の修司の声を堪能しながら眠りに就いた。
翌朝、平日よりも幾分遅く目覚めた私は母に家庭教師について尋ねる。
「家庭教師の先生ってどんな人?」
「私もそんなに詳しくは知らないんだけど、大学生の男の先生らしいよ」
母の言葉に若干の抵抗を覚える。勝手に女の先生だと思い込んでいたからだ。しかも、男の家庭教師にあまり良いイメージが湧かない。メガネの坊ちゃん刈りに大きめのチェックシャツを薄いデニムにインしててみたいなイメージが頭の中に浮かぶ。何かいやらしい事をされたりしないかとか無礼な不安も頭の中を過ぎる。修司さえ私の部屋に入れた事がないのに、何だってそんな男を部屋に入れなきゃいけないんだと物凄く利己的なマインドに支配されてしまう。私は不満を抱きながら家庭教師が来るまでの時間を過ごす。
しばらくすると家の玄関のインターホンが鳴った。13時から15時までの2時間の授業の予定だが、10分程早く望まぬ来訪者が現れた。母に促され、共に玄関でお出迎えをする事になった。母が玄関の扉を開けると私の目に男性の姿が飛び込んできた。
あれっ? 想像していたのと違う。それが私の第一印象だった。少し長めの髪が緩くウェーブ掛かっていて、色白で中性的な男性だった。白の少し胸元が開いたカットソーに黒のパンツを合わせていて、小綺麗で清潔感を漂わせていた。私と目が合うと男性はニコリと笑い「初めまして、今日から家庭教師をさせていただく沢村俊介といいます。よろしくお願いします」と言った。私は不覚にもドキリとさせられて、男性の言葉に返事ができなかった。
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