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「ねぇ、どうして?
ワタシ、寂しいよ?
ねぇ、ねぇ、ねぇ?
聞いてる?
聞こえてる?
ワタシ、ずっと寂しかったの
怖かったの
カラスにつつかれて、目玉が一つポロって落ちたの
太陽が皮膚を灼いたの
野良犬に脚を食われたの
野良猫に服を破かれたの
近所の子供達に振り回されて、首がもげかけて、髪の毛をむしられたの
ねぇ、どうしてワタシをおいていったの?
ずっとトモダチだったよね。そう言ってくれたわよね?
ねぇ?今、貴方がワタシを捨てたゴミ山の中にあった携帯電話から電話をかけているの。
画面がちょこっとひび割れているだけなのに、捨てられていたの。
酷いことをするわね。…携帯電話を捨てた誰かさんも、貴方も。
寂しいわ。早く迎えにきて。」
「 もしもし?ワタシよ。
まだ迎えにきてくれないの?まあ、貴方は忙しいって、ワタシわかっているから.
だからワタシと遊んでくれなくなったもんね?
だから、いいわ。ワタシが自分から迎えにいってあげる。
トモダチだもの。
だからね、今ワタシ、貴方の家の近くの路上にいるの.
あたりがシン、として、とても暗いところね。暗かったせいか、足元を見ていなかったのか、誰かに後ろから踏みつけられたの。
早く迎えにきてくれない?
人形の足じゃ、早く歩けないの.」
「もしもし?ワタシよ。どうして迎えにきてくれないの?
すっかり日が暮れたわ。
…ああそうね、ワタシは小さいから、場所がわからないんだわ。
でも、心配してくださらなくっても結構よ。もう貴方の家の前に着いたから.
あら?どうしたの、息が荒いわ。
あ、そうね。ワタシを探して走り回ってくれたのね。
ありがとう。嬉しいわ。」
「もしもし?ワタシよ。今、貴方の部屋に続く階段を登っているの.
足音が聞こえないかしら?もうすぐ、貴方に会えるわ。感動の再会ね。
今、貴方の部屋の前にいるの.新築なのね、貴方一人だけの部屋。よかったじゃない。自分だけの部屋がほしいって言ってたわよね.
ホントはね、とてもワタシ怒っているの
貴方はずっとトモダチだって言ったわよね。
それなのに、ゴミ山に捨てていったのよ。
ワタシがどんなに寂しかったか、孤独だったか、恐ろしかったか。貴方にも想像して欲しいものだわ.
でも、ワタシ貴方というトモダチのために、我慢したもの。
だから、怖がらないでね?
優しく触れて、昔みたいにぎゅって、抱きしめてほしいわ。
あとそれと、新しい目玉を頂戴な。貴方には素晴らしい目玉が二つもあるんですもの.片っぽくらい、いいわよね?
足も片方欲しいわ。私の右足、犬に食われちゃったんだもの。
貴方には立派な足が二本あるのだから、一本くらい、くれるわよね?
手も欲しいわ。片方ないのですもの.貴方には白くて綺麗な手があるのだから、片方だけもらったっていいわよね?
貴方のその柔らかい腕に、私実はちょっと憧れていたのよ。
服も、髪も、皮膚も。新しいのを頂戴。いいわよね?
トモダチなんだから。トモダチなのに、貴方はワタシを裏切ったのだもの.
どうしたの、声が震えているわ。怖い夢でも見たのね.そういう時、ワタシはいつも慰めてあげたっけ。
今日も、慰めてあげる.もうすぐ着くわ。」
「ワタシ、メリーさん。今、貴方の後ろにいるの。
違うちがうチガウちがうちがうちがちがちがちがちがうがう!!!!!
貴方はこんな子じゃないわ!
ワタシをいらないっていう子じゃないわ!
そう…そうか、貴方はワタシの大好きなあの子じゃなかったのね!
髪型も似てるけど、違う人なのね!
着てるお洋服も同じだけど、違う人なのね!
茶色みがかった黒い目も、真っ直ぐにカットされた前髪も、あの子に似てるけど、違う人なのね!別人、なのね!
あの子のふりをした、別人。
きっとそうだわ!そうに違いないわ!
この家だと思ったのに。
ワタシったら、間違えたのね。
あの子を探さなきゃ。
隣の家かしら。お向かいの家かしら?
違ったら、斜め向かいの家に行きましょう、それも違ったら、そのまた隣、となり、トナリ、トナリ。
ワタシ、メリーさん。
今、貴方の後ろにいるの。
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