0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
9月8日夜
高田健喜は歴史学者だった。彼女はわずかの金しか持っていなかった。だから生活に困窮していた。もう今年を乗り切れるかどうか、そこまで金がなかったのだ。
というのも、彼女は歴史学者でありながら、あやふやな事柄を論文にしているのだ。彼女は神のことを書いたと思うと、実在の人物のことを書く。彼女の論文の中では、伝説と史実が飛び交っているのだ。
そしてその書き方にも問題はあった。伝説をあたかも本当のことのように書いているのだ。文体が論文のそれではなく、もはや小説のそれだった。
それだから、彼女の論文を読みたいという人は歴史学者の中では誰一人としていなかった。
彼女は世間を騒がしている宇宙の収縮に全くもって興味がなかった。しかし、運命というものに抗えるはずはなく、彼女はこの事件の主要人物となってしまうのだ。
言ってしまうと、結果的に彼女はこの話に関しては良い結末を迎えるのだが。
最初のコメントを投稿しよう!