チョコの予約

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「まだチョコ渡せてなくて落ち込んでるとこ」  詩織が何の躊躇もなく喋っちゃって、私はビックリした。 「詩織〜! なんで言っちゃうのよ〜!」  私はうなだれるように再び突っ伏した。そんな私を見て、神谷くんはケラケラ笑った。 「オレ、まだ誰からももらってないんだよね〜。もらってやろうか?」 「なんでやねん!」  思わずツッコミを入れた。神谷くんってこういうヤツ!。 「義理でもいいよ〜。オレ、義理チョコすら一つももらってないから」 「あ〜ごめん。準備してないんだわ」 「なんだぁ〜」  神谷くんは残念そうに自分の席に着いた。  チョコを渡して告白したいとか、願わくば中村先輩と付き合いたいとか、そういうのじゃないんだ。そんな高望みはしていなくて、憧れの先輩に最後だから直接チョコを渡したい、一ファンとして。  授業中、先生の言葉が頭に入ってこない。中村先輩にどうやってチョコを渡そうか、なんて声をかけようか……。そんなことばかりずっと考えていた。  部活は引退しているので、三年生の帰りは早い。早く昇降口に行かないと、中村先輩が先に帰ってしまう。終わったら猛ダッシュで行こう。
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