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中村先輩を見つけて、声を失った。手に提げた紙袋には、あふれんばかりのチョコの山。そして、クラスメイトかな、数人の女子に囲まれて、話しながら中村先輩は私とすれ違った。
「中村、今年はまた一段とチョコ多いね」
「ちゃんとお返ししてよね〜」
「でも、どれが誰のか、オレもう把握できないんだけど……」
「これだけあったらねぇ……」
……何も言えなかった。……何もできなかった。中村先輩が見えなくなった後に、カバンを開けて綺麗に包装されたチョコを見た。せっかくお姉ちゃんと一緒に買いに行ったのにな……。中村先輩、あんなにチョコたくさんもらってるんだ。……そっか……。
私は仕方なく帰ることにした。運動靴に履き替えて校舎をあとにしようとした時だった。
「有坂〜!」
後ろから神谷くんの声がした。振り向いたら、神谷くんが走ってきた。
「チョコ渡せた?……って、その感じじゃ渡せなかったっぽいね」
私のカバンには、渡せなかったチョコが入っている。
テンションの低さでバレちゃったのかな。私がしょげていると、なぜだか神谷くんに笑われた。
「有坂ってホント分かりやすいな」
「単純で悪かったね」
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