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私のカバンには、チョコが入っている。中村先輩に渡そうと思って、準備していたチョコだ。
中村先輩は今年の三月で、中学を卒業する。渡すなら、もう今年のバレンタインしかない。
今日、いつ渡そうかと朝からソワソワしていた。昼休憩に三年教室の方へ行ってみたりしたけど、中村先輩は友達と話していて、なんとなく話しかける勇気が出なかった。
中村先輩とは全然話したことがないんだけど、とにかくかっこよくてモテる。あのかっこよさは、学年が違っていても目立つし、中村先輩を知らない人はいないと思う。存在するだけで誰もが振り返る、憧れの先輩だ。
「理奈、中村先輩に渡せた?」
友達の詩織が小声で聞いてきた。私はため息をついて首を振った。
「どうすんの。もう放課後に待ち伏せするしかなくない?」
「そうだね……、それしかないよね……」
私は机に突っ伏した。放課後に昇降口で待っていたらチャンスはあるかな。でもまた友達と話していたりしたらどうしよう……。渡せるかな……。
「有坂、何してんの?」
ガバッと身体を起こすと、クラスメイトの神谷くんが不思議そうに見下ろしていた。
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