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また
はるか昔のこと、私は神の教えを伝える伝道師だった。
だけど、大切なその人は、唯物論を信じてその思想に基づいた考え方をみんなに伝えていた。
私は、その人にどうしても神の存在を信じてもらいたかった。でも、何度もはじかれて、その度にケンカしてしまった。
いづれ、その人が間違ったことをみんなに伝えて、地獄に落ちてしまったことを天国の天使の世界に戻って知った。
私は死んだあと、天使になれて。でも、彼は地獄に落ちていて。
生きていた時、間違った生き方に気づかせてやれなくて、あんなに近くにいたのに救ってやれなくて、それが悔しかった。
とてもとても。
悲しすぎた。
胸が張り裂けそうなくらい。
天使の仕事で毎日地上の人を助けながら、私は地獄を毎日見ていた。
苦しそうな彼を見ながらいつも涙を流した。ごめんね、救ってやれなくて。
本当はすぐにでもそこに行って、気づかせたい。
でも、生きていた時のように反発されるしかない。
だから、私は彼がいつか自分で自分の間違いに気づくことを願って黙って見ていることしかできなかった。
やがて、念願叶って彼は反省し、他の天使たちによって地獄から抜け出した。
私は、彼が地獄から抜け出したことを聞きつけるにつけ、彼に会いに行った。
抜け出したばかりだったので彼は泣いていた。
私はすぐに抱きしめた。たくさんたくさん泣いた。
次生まれ変わる時は、絶対絶対あんなことにはさせないから。
私は強く強く思った。
それからしばらくして、彼が今度は必ず神仏のお役に立つ、多くの人たちを幸せにする音楽家になるという計画を立てて、地上に生まれ変わることになった。
私は、その時はただその彼を見送るだけだったが、やはりいつも気になって彼の様子を見ていた。
それから彼の未来をふと見たくなって、のぞいたことがあった。
その未来を見た時、まずいと思った。
絶対に救いに行かなきゃいけない。
私は必ず彼を天国に返すと神仏に誓った。
そして、生まれ変わりの計画書を、ほかの偉い人たちから指導を受けながら完成させると、私も地上に生まれ変わった。
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