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1 婚約期間の始まり
「――では、そういうことで。イゾルデ殿」
「ええ。このたびは息子がとんだ真似を……。申し訳ありませんでしたわ」
「いえいえ! とんでもありません。こちらこそ、降って湧いたようにまたとない良縁で」
「まあ。うふふっ」
ドレスが揺れる、さらりと衣擦れの音。それを見送るために椅子から立ち上がる音。
テーブルを挟んで向き合うのは、豪奢に着飾った貴婦人と恰幅の良い紳士が一対。
いま、まさに重要な会談を終えたところだった。
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