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「ハルナ、おはよう」
「あんたさ、ほんといつも定時で迎え来るよね」
「ルーティンは崩したくないんでね」
我が家の玄関でタカユキはそうやって涼しい顔をして言うと、ちら、と携帯を一瞥した。あの後すぐに、タカユキくん迎え来たわよ、と金切り声一歩手前みたいな口調で母親が叫んできたので、わたしはだらだらとブレザーのジャケットに腕を通しつつ玄関に向かったのだった。
タカユキは幼稚園の頃からの幼馴染だ。親同士が仲が良くて、学校もずっと同じだったわたしたちも自然と一緒にいる時間が増えて仲が良くなった。それでもタカユキと男女の関係になることはないまま今に至っていた。
それでもわたしは今、タカユキが、わたしに想いを寄せているのではないか……と踏んでいる。
そうでなければ、高校二年生になってまで、毎朝タカユキがわたしを迎えに家までやってくることの説明がつかない。いくら幼馴染だからって、高校生にもなれば交友関係だって広がるし、思春期というトンネルをつつがなく通過しているのなら異性に興味だって抱くはずだ。それでもタカユキにそうした噂はひとつも立っていない。それでいて「ハルナには何でも話せちゃうな」とか平然と言うんだよ、こいつ。
勘弁してほしいんだよね。わたしだって、同じスピードでその思春期というトンネルを、出口に向かって走ってるのに。ただの幼馴染だったはずの、すぐそばにいるこいつのことを、変に意識してしまう。
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