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「学力的にもうちょっと上を目指しても良いんだぞ」
こんな時期になって私の成績がちょっと伸びているらしい。先生に呼び出され進路のことで話をした。私は安全圏でしか学校を選んでないのでそれを気にしたよう。
しかし、私が背伸びをしたところで彼と同じ大学は難しい。「挑戦するには良い」とは言われたが、ちょっとストーカー的にも思えるから返事は保留にしておいた。
そんな事だから私もお喋りの時間に遅れる。こんな事が増えて段々とみんなと距離ができるのかと思うと寂しい。彼と会えなくなるのが辛い。
「今日は用事だった?」
お喋りのためにみんなで集まる教室に向かっていると、聞きなれた好きな声が聞こえた。振り返ると好きな彼がいる。
「ちょっと進路相談」
「そっか、希望は?」
歩速を緩やかにして彼と話を進めた。今の私たちに進路の話をさせたらそれはどれだけでも続く。元々彼とは会えば声をかけるくらいの仲なのだから、そのくらいは当然だ。
今は取り合えずこんな時間が愛おしくて仕方がない。
「なんか、卒業したくないな。みんなと別れるのは寂しいよ。一緒の大学に進んでくれたらうれしいのに」
どうやら彼も今の仲間たちを良く思っているみたい。そこに私も居るのがとてもうれしい。
「みんな君みたいに賢くないんだよ。誰でもそう簡単に進路を選べない」
「そっか、だったら俺がランクを落とせば君も同じ大学に進んでくれる?」
ドキンッと私の心臓が鼓動を打ったのがわかる。ハッとして立ち止まってしまった。
「冗談。君も自分の好きな進路を選びなよ」
数歩先行してしまった彼が振り返って心配そうな表情をしていた。
「うん。そうだね」
適当にしか言葉を返せない。私がとてもキライになる。今は告白のチャンスだったのに、今の関係を壊すのが怖い私がブレーキをかけていた。
それからはちょっと黙って教室に到着する。扉を開くと皆が驚いている。
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