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「今日も俺の悪口か?」「そうだよー」「ホント悪い奴だから」
なんだかいつもと印象が違ったけれど、彼の言葉で普段通りになった。
「なんで俺がそんな悪いんだよ」
彼がすんなりと話に加わる。私は黙って座った。
「それはねー。君の恋愛関係が知れないから。最近勉強ばっかりで。好きな人とかいないのかなーって」
軽いけれどそれは別に悪くなんて語るのとは違う。親友は私にウインクをしている。願っていないんだけど、今彼女の言葉を遮るだけの勇気もなかった。
彼は一瞬困った顔を見せてから、その真っ直ぐな瞳を見せていた。今は正面からその瞳を見るのがちょっと恐ろしいから顔を少し俯けた。
「好きな子は居るよ」
その言葉でみんなが「わぁ」っと盛り上がった。
「誰? 知ってる子?」「まさか、この中に?」「ヒント!」
次々とこんな言葉が飛び交った。私の心臓はもう鼓動を止めそうだから言葉なんて生まれない。
「そうだな。誰かは言わない。だけど、とっても素敵な人。芯が強くて、笑顔が可愛い、明るい子」
「そんな奴居たっけ?」「取り合えずこの中には居ない」「いや、私じゃない?」
楽しい会話が続いている。一応私の思いを知っている人たちは軽く言葉を出さない。それでも難しい顔をしていた。
そして私はと言えば、多分、青い顔をしていただろう。本当に気分が悪くなっていた。軽く俯いていたつもりだったのに視線はもう足元しか見えない。それも段々と涙でにじんでいた。
「ゴメン! 今日は用事があったのを忘れてた」
一言急いで話すと、自分のカバンを引っ掴んで走ってその場を離れた。
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