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「ちょっと待ってよ!」
仲の良い友達が私のことを追っている。その言葉は聞こえていたが今はこの現実から逃げる以外の行動を脳が拒否していた。
暫く全力で走って学校の近くの川にかかる橋で私は捕まった。
「今のって、まだ望みは有るよ」
友達が息を切らしながらも腕を掴んで私の事を落ち着けようとしている。
「だって、あんなの私と真逆だもん。彼は他の子が好きなんだ」
「そんな事ないよ。強い部分も有るし、笑顔が良いし、明るく喋るじゃん」
「弱虫で仏頂面の暗い私が彼なんかを好きになったのが間違いなんだ」
私は親友に縋り付いて泣き始めてしまった。あんなに素晴らしい恋だったのに終わったらとても辛い。親友は私の事をやさしく背中を叩いてくれていた。
随分と泣き続けてやっと落ち着いたころになって、人目に付くところで泣いているのもはばかれるので近くの自販機へと移動した。
「もし、これが振られたとしたら」
「振られたんだよ。確実に」
それは確実だ。
「取り合えず。貴方は彼の事恨んで許さなくても良いんだよ」
「許さない?」
「そう。あたしなんて彼氏と別れる度にその人のありとあらゆる事を許さないよ」
まあ、彼女は恋人もこれまでそれなりに居た。私とは違う。そんなアドバイスなんだろう。
「でも、それって付き合ってたからそう思えるんじゃないの。私は振られたのにまだ好きなんだもん」
「だからだよ。好きな気持ちが終わらないでしょ。許さないで恨んで、キライになる。そうすれば心も軽くなるし、次の恋も見つけやすい」
「一理あるとは思う。だけど、今は彼の事をキライになりたくない」
私の本心。人を好きなのをそう簡単に終わらせることなんてできない。私は彼の事を好きなんだから。
「今はそれでも良いよ。だけど、本当に振られたのなら憶えておいたほうが良いから」
彼女の言葉が回っている。家に帰ってろくに食事も摂らないで部屋に横になって天井を見つめていた。それでも彼の事をキライになるのが怖い。
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