心許帳綴

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 次の日、私は仲良しの集まりに参加しなかった。言い訳として「勉強するから」と友達に伝えてもらった。それは嘘にはしない。こんな機会だから勉強に力を入れてみるのもいいだろう。  勉強をしていると案外進んでしまう。これなら彼と同じ大学を目指せるかもとふと思ってしまったが、それはもう無意味なことだと落ちていた。 「少し進路に光明が有る」  図書室で適当に勉強するのにも限界を覚えて、参考書でもと本屋に向かう。段々と学力が上がって親も先生もはっぱをかけるようになっていた。  本屋は仲良しグループのもう一つのたまり場になっている。みんなが居たらと思うと気が重くなるだろうが、今日も教室でお喋りしているから会うことはないだろう。  でも、そこに一番会いたくて、会いたくない人が居た。それは私の好きな彼。参考書を見ている。振られたのに心が高鳴った。恨み許せないことなんてない。 「参考書見つかった?」  話しかけたのは私じゃない。とっても綺麗な人だった。 「まあ、この辺かな」 「好きな子と同じ大学に進みたいとは悪くないじゃないか」  彼の横でニコニコと笑っている。それで分かった。彼の好きな人はこの人なんだと。会わない間に彼は恋路を進んでいたのだろう。そして大学も同じところに進むのだと。  二人の姿を見ていると泣けてしまいそうになる。私は彼に見つからない様にしながらその姿を見送った。本棚には彼の取った参考書が空欄としてポッカリとしていた。それは私の心のような。 「こんなんじゃダメだ」  呟くと私は彼の持った参考書を残ったものから予想した。店で在庫を出してもらう。 「許せない。許さない。許してはダメ」  そう語りながら勉強を始めた。彼に勝つために。なんだかそれくらいしか方法なんてないような気がして。  勉強をしても彼がふせんの様に張り付いた。どこにだって現れる。計算式を解いていると、今彼も同じ問題を考えているのだろうかと思ってしまう。 「彼の事なんて忘れないと! 許さないようにしないと」  必死になっていた。彼のキライなところを見つけなければならない。そう思って、数学のノートに彼のキライなところを列挙した。  十個も見つからない。それに挙げたのは、本当にキライなところではない。私が好きな彼の駄目な部分でもある。 「許さない。恨まないと」  こんな事を言いながら叶わないで涙をノートに落としていた。結局進んだのは彼に勝ちたいと言うか、届きたい為の勉強くらいだった。
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