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都合が良かったのか悪かったのか彼の姿は校門のところに有った。誰かを待っているみたいに思える。もしかしてあの時の彼女なのかもしれない。そう思うと足がすくんだ。
「今ケリをつけないと未来までその思いを引きずるよ。あたしは貴方にそんな思いはしてもらいたくない。話せばどちらにせよ終わるんだから」
友達はちょっと怒っているみたいで怖かった。怒鳴られて私は彼の元まで連れて歩かれた。
「久しぶりだね。ちょっと話したいんだ」
「丁度良かった。彼女からも話が有るからヨロシク」
彼のところまでたどり着くと、彼のほうも話が有るみたい。そして私の友達はそれだけを言い。「頑張りなさい」と私の肩を叩いてその場から離れた。
「最近会えなかったよね。もしかして、なんだけど。俺の事避けてる?」
避けていた。お喋りの集まりだけじゃない。普通に学校に居る時なんかも彼から離れるような生活をしていた。
返事に困っていると彼がため息をついた。
「俺って君に悪いことしたかな。だったらあやまるよ。だから、また勉強の合間に話そうよ」
彼のやさしさがうれしい。前だったらそうなのかもしれない。それが今では痛い。彼を許さないと決めた私にはそのやさしさが凶器のようだった。
「そんな風に言わないで! 私にやさしくしないで! 君の事なんて許さない! 恨むんだから」
嘘を言う。彼にではなくて自分に対して。こんな言葉全く願っていない。
けれど、そんな事を言われた彼はひどく困った様子だ。それはそうだろう。言葉だけでなく、私は泣いて彼の事を叩くように腕を振り回してる。
「そんなに許されない事が有ったなら教えて。本当にあやまるから。ゴメン」
彼にあやまってほしい訳ではない。これは私の問題なのだから。
もう全部話してしまおう。しょうがないんだ。これからも彼に良い顔をしたい私の小さな願いなんて通じないんだから。
「私は君の事が好きだったの! だから貴方に好きな人が居て、許さないって思ったんだ! 悪い女なんだよ」
どれだけ言葉を強くしても怒っている様には話せない。言葉を吐くたびに涙が流れてしまうから。
「ちょっと待って」
「待たない! この間、本屋で参考書を一緒に探してた人が好きなんでしょ。解ったから叶わない恋なんだって。だけど恨ませてよ。そのくらい許して」
「それは勘違いだよ!」
「間違いなんてないよ。私は君をキライになりたいんだ。君が誰かを好きなのを許さないんだ。君の事を恨みたいの」
一方的にまくしたてたいのに上手く話せない。どちらかと言うとお願いを子供の様に駄々をこねているようになっている。
それでもこれで終わりだ。全て彼に伝えた。もう私は彼の事をキライになるしかない。許してはダメなんだ。恨み続けるしかない。
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