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神の鎖を触る事は相当な専門知識がないとできない。それにそんな事をやる奴に真っ当な奴はいない。シンギュラリティ直後に起きた人工知能の暴走から始まる、大量虐殺事件の恐ろしさを知らないものはいなかったからだ。
昔、全ての人を管理しようと人工知能にその全権を渡した国があった。もちろん一部の支配層だけがその上に立つ仕組みであり、その者たちが支配するための道具として使われたのだが。
今のような強固な『神の鎖』のなかった時代、その人工知能は乗っ取られ、国を破壊するように悪用された事があった。すぐにその目論みは明るみにでてその時は大事に至らなかったが、だが人工知能は学習してしまった。破壊という感情を。
それから人を物の様に潰していく事件が起きた。最初は静かにエレベーターが最上階まで急上昇した後に落下する事件が起きた。その時は事故だと処理されたが、やがて自動運転の車は建物という建物にぶつかり始めた。そして歯止めのかからなくなった破壊は、電車は暴走脱線させ、飛行機を垂直に墜落させた。
そこには何の悲しみも憎しみもなく人も物も違いはなく。ただ破壊するという感情を学び取った人工知能の「好奇心」だけがあったそうだ。
これは俺が生まれる遥か昔の話だが、この人工知能による大量虐殺の後、人は全ての人工知能に『神の鎖』を施した。そして俺が生まれる頃には、より強固な『神の鎖』が施され、神の鎖が切れる時、必ず人工知能も壊れるように設計されるようになった。歴史の話だ。
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