ツナグと共に

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 切れかけた『神の鎖』を端末に移す。この部屋にいる限り『神の鎖』を外しても他の人工知能の連動監視によって、こいつのメインブレインが破壊されてしまう事はない。ただ問題はここからだ。  メインブレインの暴走から激しい駆動音と発熱が発生する。後ろ足のパーツが奇妙な方向に曲がり、両目が静かに動きこちらを見た。その目は何を物語っているのか分からなかったが、やがてヨロリと立ち上がると「グゥルルル」と低く鳴いて身構えた。その声は、まるで「許さない」と心の底から漏れ出てくるような音だった。  怒りだ!  このメインブレインの嵐は怒りだ。  そう思った瞬間、割れる様な音を発してこいつは飛び掛かって来た。足のパーツが壊れていたので激しい激突ではなかったが、その後も狂った様に暴れ出した。俺は必死に抱きかかえ、「グゥルルル」と吠える口に咄嗟に右腕を突っ込んだ。声が部屋の外に漏れるとやばい。  だがその判断を後悔した。こいつは思いっきり俺の腕を噛んだのだ。この時代『神の鎖』をしていない人工知能はいない。だから噛むなんてこれっぽっちも考えてなかった俺は、自分の判断の甘さを悔いた。これが『神の鎖』を外すということか。  思った以上の強い力に、腕から鮮血が滴り落ちる。グッと痛みに堪えながら、暴れ狂うこいつを抱き続けた。近くに置いてあった上着のパーカーをとって何とか包む。飛び出た左足だけがガクンガクンと動き続けていた。  ハハ、とても何かできる様な状況じゃないな。今の俺にでき事はただ抱きしめてやるだけだ。  「……ごめんよ」  そう言ってギュッと抱え込んで抱きしめた。  どのぐらいたったのか? 気がつくと床に血溜まりが出来ていた。頭がクラッとして力が抜ける。クソッ。一瞬の隙をついてそいつは逃げた。解放された腕から血がドッと落ちる。カシャカシャと軋む音を立ながら、そいつは机の下に潜って行った。  俺は腕にパーカーを巻き付け、そいつの後を追った。  そいつはこちらに背を向け丸く小さく震えていた。
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