ツナグと共に

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「ツナグ、良く聞いてくれ、俺がお前を必ず助ける。だから、俺が来るまでしばらくロッカーの中でじっとしといてくれ。分かるか? ツナグ」  俺はツナグの頭を撫でた。 「必ず助ける。必ずだ」  そっとツナグをロッカーの中に置いた。  ツナグが一度だけ頭を上げた、俺は頷いて見せた。  それをみてツナグは丸くなり目を閉じた。そっとその上にタオルをかけロッカーの鍵を閉める。  さて、ここからだ。俺は床に溜まった血をパーカーに吸い込ませた。机などに残った血はタオルで拭き取る。単純な作業に時間がかかる。右手の痛さと気持ち悪さ、眩暈から、まともな作業ができなかったが、それでも時間をかけて全てを拭き上げた。完璧とは言い難かったが、それでも何があったかは推測されまい。  空が白み始めていた。誰か来る前に早くここを抜けなくては。  汚れたタオルや雑巾は全てカバンに放り込み、呼吸を落ち着けて歩を進めた。倒れてもいい。だが、この施設の外で。  虹彩認証でセキュリティ扉を抜ける。ここは誰かに合わないかだけ気を付ければ大丈夫だ。問題は入り口の守衛室。怪しまれぬよう気丈に歩いていけるか。15歩、いや20歩。  俺は守衛室の手前で立ち止まり深呼吸をして気を落ち着かせた。血に染まった真っ赤なパーカーを右腕ごと鞄の中に押し込む。それを左手で抱える様にして歩き始めた。血の抜けた体、そして右腕の痛さからまともな呼吸ができない。それでも少しだけ、まともに息をしている真似をするんだ。  1歩、2歩、3歩……  苦しさで歩みが少し早くなる。  守衛は良く見る顔の男だった。    「お、どうした? こんな時間に?」  「仕事がたまっててね」  この一言を言うのが今の俺の全力だ。  「大変だな。研究者ってのは」  男はあくびをして背伸びをした。  よし、このまま行くんだ! 10歩、11歩、12歩……  「おい!」  振り向かずに歩みを止めた。    「お前……」  その呼びかけを無視して歩こうと思ったが限界だった、俺はヨロッとして膝をついた。
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