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7章
日向ぼっこをしていると日が陰ってきた。
「おいオレの体!もっといっぱい食って体大きくしといてくれよ!」
「あ、元僕!この前やっと自分で獲物をつかまえたんだよ!」
「おいおい。やっとってもう結構経つだろ。しっかりしてくれよ」
「君は他の生き物を食べる時になんとも思わないのかい?心が痛まないのかい?そりゃおいしかったよ。お腹も空くしたくさん食べたいよ。でも。そのせいで一つの命が死んじゃうんだよ」
「そんなこと知らねぇよ。食うのなんて本能だろ。余計なこと考えてないで体でかくしろよ」
本能。それが僕にはない。
「元僕、今日は安定した形してるね」
「話逸らしてんじゃねぇ。大体オレの体でこの姿のなにがわかんだよ」
「わかるよ。湿度と気温、この触れてる質感。すごく懐かしい気分だ」
「さっぱりわかんね。とにかく今より少しでも体をでかくしろよ!」
そう。体が大きな事はとてもメリットなのだと最近知った。
「うーん。頑張ってみるよ」
最近周りの蜘蛛達がお見合いしてるのを見るんだ。その中で
――あなたは小さいからダメね。
――あなた弱そう。私の栄養になりなさい。
――あなたは大きいからいいわ。
体の大きさがお見合いに特に左右される。元僕もそれを知ってて、元の姿に戻ったらお見合いで有利だからああ言うんだ。お見合いして、子孫を残す。何かを残すなんて考えたことなかった。いつも大気を彷徨ってて、天候によって集められたり散らばったり、僕の意思なんて必要なかった。生き物の本能なんて知らない。生きてるものにただ憧れたあの時と違うんだ。楽しさも知った分苦しさや辛さも嫌というほどわかった。ここは僕がいていい世界じゃない。
「聞いてるかオレの体!とにかく元に戻るまで絶対死ぬんじゃねぇぞそのためにもしっかり食ってでかくなれ!」
「そんなこと言うならもう戻ろうよ」
「そんなもんオレだってさっさと戻りてぇよ。でも、あいつがさっきから全然返事しねぇんだ」
元僕はこの姿に戻りたいんだ。こんな欲に振り回される生き方に。
「あいつ?って神様の事?」
「神だぁ?」
「うん。空で話せるのは鳥さんか神様くらいだったよ。鳥さんも僕たちとはしゃべってくれないし、神様じゃないかな?」
快晴の時、僕ともしゃべってくれたのに、なんで今日は来ないんだろう。
「名前なんてなんでもいいけど、あいつホント気まぐれ過ぎんだろ」
「おーーい。神って野郎ー。返事しろよー」
元僕は本当に口が悪いな。
「オレを元に戻せ!」
「神様ー僕も元に戻りたいです!」
長い事叫んだが、元僕にももちろん僕にも神様の声は聞こえてこなかった。叫ぶうちに元僕の声も遠くなり、いずれ聞こえなくなった。
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