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2章
はい。念願叶って蜘蛛の姿になれた僕です。今はねこうやって、糸を垂らしてっと。あぁー風に流されるーー。雲に戻ったみたいだーー。気持ちいいなぁ。あ、
「やあブラザー。君も僕と似た形をしているね。風に揺られるの気持ちがいね」
蜘蛛さんが声かけてきてくれた
「今日の風気持ちいいね!何処までも連れて行ってくれそうだね」
バクッ!
「あれ?どうしたんだい?蜘蛛さん。急にいなくなって。もっと一緒に風に揺られようよ」
「ムフフフ。お前のお友達は私が食べたんだよ」
声の元をたどると、葉っぱに乗って目をギョロっとさせた奴がこっちを見てる。
「え?食べた?食べたって何?消えたの?でも、また元に戻るんでしょ?水蒸気になって気圧でく、も、に……」
仲間を食べた奴はニタニタ笑いながら口をモグモグさせている。本能的な恐怖が僕を襲う。
怖い。
「え?もうあの子は返ってこないの!うそ!さっき友達になったばかりなんだよ?返してよ!」
「会いたいかい?それなら私の舌に乗るといい」
飲み込んだのか、そいつは僕に向かって舌をベロンっと伸ばしてきた!
「風さん逆だよ逆!こっちに吹かないで僕も食べられちゃう!」
コワい!
そう。念願叶ったはずなんですが、今大大大ピンチなんです。お友達になったばかりの蜘蛛さんが目の大きなあいつにいきなり食べられてしまって……。食べられたお友達はあの喉の奥に行っちゃったんじゃないかと思うんです。あのギョロ目が吐き出してくれたら……きっと助けられる。でも、近づくのが怖い。僕ははじめて恐怖というものに脅かされています。
そして今まさにギョロ目に僕も食べられそうになっているのに、いつもお友達だった風が味方をしてくれないんです。どうしよう。嫌だぁぁあ!
プツンッ
コテッ
落ちた?あれ、僕、食べられてない!糸が切れたんだ。
助かった?のかな?
風さん。僕たちお友達だったのに、姿が変わっただけで全然仲良くしてくれないなんて僕、すごく寂しいよ。はぁ。でも、今回は運が味方してくれて、糸が切れてよかった。
それにしても、せっかくお友達になれたのに、食べられちゃった。もうお話できないのかもしれない。よくわからない。よくわからないけど、怖くて怖くて仕方がない。
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