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3章
あーそうそう。糸引いて風に揺られるままにしてたら、危うくカエルに食べられそうになったんだよなぁ。あのギョロっとした目つきに長い舌。恐ろしいったらないぜ。
でもあいつ普段こんな風に揺られるだけの生活してんのにオレの姿になってちゃんと生き延びられるのか?戻る時に体がありませんじゃたまったもんじゃないぜ。
まぁ、でもオレも最近大きくなってたし、子どもの頃みたいに風に飛ばされるがまま制御できないとか……ないよな?最近じゃ立派な巣も作れるようになったし、体もでかくなったしな。大丈夫大丈夫!……多分。
しかしここの生活は本当に何も考えなくていいから楽だな。風に揺られてこの前まで地平線を見てた気がするけど、今度は海が見えてきた。あれが水平線かぁ。世界は広いなぁ。うぉ!めっちゃ風強くなってきた。
「おーい。逸れるなよー」
って、どうせ言ったって無駄か。
ていうか、あいつら結構離れて行ってるな。いや、オレが離れて行ってるのか?あれ、オレ今どんな形してる?ほぼ形なくなってね?形なくなったらどうなんの?
「おーい!前に一緒にしゃべったやつー何処だぁ?」
やはり返答はない。
「オレはこのまま消えてなくなっちゃうのか?」
それでも返答がない。
「ふざけんなてめぇ!オレがせっかく丁寧に聞いてやってるっていうのに、一言もないなんてなめてんのか!」
「やれやれ、ウルさいね。静かにしたまえとこの間言ったではないかネ」「やっと来やがった」
「おい。オレだんだん形が小さくなってきてる気がするんだ。このまま消えちまうのか?」
少し怖いが、事実を聞かない事には始まらない。
「消えるね。あと少しだヨ」
「そうか。消えるって事は死んじまうって事か。また元の姿に戻れると思ってたん」
「死ぬとは違うヨ」
訳が分からない。
「消えちまうのに死ぬとは違うってどういう事だよ」
「はぁ。君は自分が何者になったのか知りもしないのかネ」
「雲だって聞いたくらいで後は何も」
「そうだ雲だ。雲っていうのは水蒸気やホコリの集まり、つまり元から生きてなどいないのだヨ」
生きていない?
「どういうことだよ」
「わからないのかい?君はもうそろそろ消える。でも、死ぬわけじゃない。ただ元の形に戻るだけだヨ」
「そもそもあの子が君と変わりたいと言ったのも生き物になりたいという理由が大きい。元から生きてたら意味がないのだヨ」
こいつの言ってる意味がさっぱりわからねぇ。生き物ってなんだ?あいつは何処まで知っててオレと変わったんだ?
「オレはとりあえずその生き物ってやつじゃなくなったってのはわかった。でも、じゃぁ雲ってなんだ?生き物とそうでない物の違いってなんだ?」
「そんなことも知らないのかい。まぁいいさ、時間はまだまだある。これから知っていくといいヨ」
「いや、オレは今知りたいんだよ」
「〇△◇□」
何言ってんだかわかんねぇ。
音も聞こえなくなった。あ、オレ形なくなった。
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