3章

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「いやあぁぁあぁ!怖いぃ。僕より大きな生き物ばっかり、なんでいっつもいっつも僕を食べようとしてくるんだ。怖いよぉ」 「逃げないで。私の子ども達の栄養源になって欲しいだけだから」 「それが嫌だって言ってるんだよぉ」  いつも追いかけまわしてくるこいつはカエルという名前らしい。飛び跳ねるし、動きは速いし、何より長い舌が一瞬で伸びて丸のみにされそうになるんだ。こいつらにもう何匹も友達がやられてる。  もう戻りたいよ。生き物になりたいって思ったのは自由だと思ってたからなんだ。こんなに過酷だと思ってなかったんだよ!戻してほしいよぉ神様! ――戻りたいのかい? 「あ、神様!戻りたい。僕戻りたいよ!」 ――そうか。でも、今あっちの子は水蒸気だからネ。 「あ。そうか。そういえば今雲一つないね。今は元僕とは話せないんだ」  だとしても、 「神様、あのカエルってのから逃げるにはどうしたらいいの?食べられちゃったら僕死んじゃうんだって。友達がたくさん食べられちゃったんだけど、それきりみんな顔も見せてくれないし、話すこともできなくなっちゃったんだ」 ――そうだ。それが弱肉強食という世界。つまり生きるという事だヨ。  これが……生きる。 「食べられないように逃げ回ることが生きる?」 ――まぁ。今はそう捉えてもいいんじゃないかネ。 「僕、頑張って逃げ回るね。元僕にも言っておいて!僕頑張るよって」 ――そうかい。せいぜい頑張りたまえヨ。  逃げ回ることが生きる。生き物になれたけど、なんて過酷なんだ……。あと、動き回ってすごく疲れた。お腹が空いたなぁ。 「神様!お腹がすいたらどうしたらいいんですか?」 ――お前も獲物を狩るんだヨ。  獲物を狩る。それはあの恐ろしいカエルのように何かを襲って食べるという事……? 「僕はあの蝶やバッタみたいに草を食べればいいんじゃないんですか?」 ――お前あれを食べてみたかい?  皆おいしそうに食べてるから、一度食べてみた。しかし、食べてもすぐに吐いてしまった。 ――お前にはあれを消化することはできないのだヨ。獲物を狩ること、そしてそれを食べることがお前の栄養になる。獲物を狩るための武器それが巣だヨ。  巣?鳥や蜂が作ってるあんなのの事かな? ――お前がその姿になった時にいた場所がお前の巣だヨ。  あれが巣。僕はこの姿になれた喜びですぐに駆け出してしまったが、糸で編み込まれたあの変な形のものが僕の狩りの道具なんだ。 「僕、でも、誰かを食べるなんて嫌だよ。それに巣だって作れるかどうか」 ――じゃあ飢えて死ぬことだネ。まぁ対して消費しなければ数週間くらいは生きられるヨ。  食べなくても死ぬのか。言われなくてもすでに結構消費されていることはわかっている。でも、誰かを食べるだなんて僕にできるだろうか。
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