3章

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 あー今日は気持ちがいいなぁ。風は穏やかだし、仲間を引き連れてる感じもオレ様一番って感じだし最高!そういえばこの体になってから腹とか減らねぇな。ホントに楽でいいなぁ。消えても死なねぇし、恐怖も空腹もないなんて気楽なもんよ。 「そんなこと言って、雲としての大切な仕事はできているのかネ」 「うおぁっ!てめぇ。いつもいつも呼んでもこねぇのになんだよ今日は」 「君は雲としての自覚が少し足りないのではないかと思ってネ」  雲の仕事?雲としての自覚?何言ってんだこいつ。オレはあいつと入れ替わってやっただけで、別にこの姿になりたかったわけじゃねぇし、別にあいつの仕事をオレがやる必要はねぇだろ。 「君。雲としての仕事をおざなりに、あの子が必死に守ってきた体にやすやす戻れると思っているのかネ?」 「はぁ!?そんなこと知らねぇよ」 「そうか。じゃぁ戻れなくてもいいという事だネ」 「そうは言ってねぇ!」  この気楽な生活を少しの間満喫したらとっとと戻ってやるつもりなんだ。戻れないとか聞いてねぇぞ。 「では雲としての仕事ができるかい?」 「やってやろうじゃねぇか」 「まず雲とは、水蒸気が暖かい空気に運ばれて上にあがっていく。上に行けば行くほど空気は冷やされ水や氷の粒ができる。それが【雲】だヨ。ものすごい速さで出来上がるものもあればゆっくり時間をかけてできるものもある。雲ができることで地球の表面を覆い、太陽光を吸収、反射し、地表を冷ます事や雨を降らす役割をになっているのだヨ。雲にはその高さやできる速度によって種類が異なってくる……」 「あああぁ!もう、うるさいうるさい!」 「なんだネ。君が知らないというから雲について懇切丁寧に説明しているというのに」 「ごちゃごちゃ長ったらしい説明はいいんだよ。オレは結局何をしたらいいんだ」 「それが人にものを頼む態度かネ」 「おしえてクダサイ」  少しの沈黙の後、 「ただ気候に風に太陽に身を任せるんだヨ」 「は?それだけか?」 「いかにも。我々に意思など必要がない。意思を持つのは生き物であるが故の事だ。自我や決定権は君にはないのだヨ。ただ全てのものに身を任せていればいい」 「簡単だな。てか、そうしてただろ。何がいけないんだよ」 「わからんか。まあわからなくても無理はない。ただ、君がこの雲を率いているなどと思い上がったことだけは二度と口にせぬよう気を付けたまえヨ」 「はぁ……」  結局何が言いたかったのかよくわからなかったが、身を任せればいいだけなら簡単だな。逆に変わってくれてありがたい気もしてきたぜ。
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