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扉が開いた。時間的に、圭だと思ったのだが、それにしては乱暴すぎるし、只今戻りました。との挨拶がない。
不審に思い長瀬隼人は顔を上げた。
「……? どうしたの? 圭君は一緒じゃないの?」
「驚かないで下さいよ、麻上が……」
高山陽次は口を開けたまま、隼人を凝視した。
「圭君がどうしたって?」
「その恰好、すっごく派手に見えますよ」
言われるまでもなく、自覚はしている。
長瀬隼人という名には不釣り合いな、べっ甲色の瞳、肌は日本人と変わりはないが、くっきりとした二重、彫りの深い顔立ち。
なにより会う人を驚かせるのは、紅い髪であった。
紅い髪の探偵。
それが隼人の別名である。
そんな派手な外見に慣れているはずの陽次が、派手だと言うのには理由があった。普段は大人し目の、細い縞柄か無地のシャツを身に着けているのだが、今日は、生成り色に茶色の格子柄のシャツ。お気に入りではあるが、少々派手である。
「そんなことはどうでもいいから。圭君がどうしたって?」
「あ、そうそう、麻上が、女の子とランデブーに行ったんですよ」
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