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しばし、思考が停止する。ランデブーの意味を考えていた。
「学校の前に可愛い女の子がいましてね、多分、初対面だと思うんだけど、二人して見詰め合って、用があるから、先に帰ってくれって言われたんですよ」
陽次が慌てる意味がわかった。
圭という人間は、ネンネなのか潔癖なのか、異性に全く興味を示さない。自身も、恋愛はもちろん、結婚する気もないと常日頃公言しているだけに、驚きの事実である。
「どんな子だい?」
「とにかく、可愛い子です。
清楚な洋装で、お嬢様だと思うけど、ひとりでした。
なんてっか、どっかで見たような気がするんですよね、あの子。どこだったかなぁ……」
「洋装ってのは、女学校の制服?」
「いんや、違います。淡桃色の服にレースの襟で、同じ色のスカート穿いてました。
なんか訳ありっぽい感じでしたよ。泣き出しそうでしたもん」
「泣き出しそうだった?
でも、圭君とは初対面らしいと言ったよね?」
「はい。あの様子は初対面だと。
ん? じゃあなんで、あんなだったんだろ。
普通一目惚れなら、赤くなるもんですよねぇ」
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