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「ただいま」
孝太郎の返事はなかった。
まだ怒っているようだ。
なんで?なんで?孝太郎が告白されるのはよくて俺はダメなの?
要は着替えると冷蔵庫を開けてハンバーグを作った。
「孝太郎、ごはん」
孝太郎は相変わらず無言を貫いている。
無言のまま二人は夕飯を食べた。
「お前、ちゃんと断ったのか?」
不意に孝太郎が口を開いた。
断った、断ったけど。
「断ってないって言ったら?」
要は敢えて挑発的な瞳を向けた。
そのまま続ける。
「孝太郎なんか、俺の気持ち全然わかってくれないじゃん」
すると孝太郎が席を立って外に出て行こうとする。
「孝太郎!どこ行くの!」
孝太郎は要の言葉を無視して外に出て行ってしまった。
深夜0時を過ぎても孝太郎は帰ってこなかった。
要はテーブルにうつぶせて眠ってしまっていた。
朝起きたら、また肩に毛布がかけられていた。
テーブルの上に朝食が用意されている。
走り書きがあった。
『要、ごめん』
その文字を見て要の瞳から涙がこぼれた。
俺の方こそごめん、孝太郎。
意地悪してごめん。
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