もしも君が僕のことを思い出したら

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          2  翌朝、校舎の玄関で靴を履き替えていると、トーコが僕の横を通り過ぎた。僕は慌てて彼女のもとに駆け寄った。 「トーコさん!」  彼女が振り向いた。 「何か?」 「昨日はどうしたの? どうして急にいなくなったの?」 「何のこと?」 「えっ?」 「何のことだかわかりませんよ」 「僕たち、一緒に花火に行って・・・」 「なぜ私が君と花火に?」  僕は衝撃を受けた。 「ごめん。何か気に障ったことでもあった?」 「私、君の言っていることがわからないんですけど」  靴を履き替えて、彼女が先に廊下を歩いて行った。僕は訳が分からなくなった。確かに僕は彼女と花火に行った。彼女の柔らかい手の感触を今もはっきりと覚えている。  僕が3階まで上った時、トーコは1組の教室に入ってしまった。僕は3組へ入り、自分の席に着いてトーコのことを考えた。
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