もしも君が僕のことを思い出したら

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          6 「どうしてはなびはおそらにあがるの?」  マリアが僕に聞いた。 「花火は広い場所に咲くんだ。広いお空に咲くからきれいに見えるんだよ」 「ふうん。でもまちがってあたしのところにおちてきたりしないの?」 「その時は僕がマリアちゃんを守るよ」  僕は笑って言った。 「シンジ君、今なんて・・・?」  トーコが表情を変えて僕に聞いた。 「花火が飛んできたら僕が守るって」  一発の大きな花火が夜空に咲いた。まるで僕達に向かってくるような大きくて激しい花火。トーコが急に僕の手を強く握った。 「シンジ君!」  花火の轟音が響く中、トーコが僕の名前を叫んだ。 「どうしたの?」 「思い出した・・・! 私、全部思い出した!」 「思い出した!?」 「シンジ君、ごめんなさい! シンジ君は私のせいで死んだの!」 「ママ、どうしたの?!」  トーコが心配そうな顔をしてトーコの顔を覗き込んだ。 「僕が死んだって?」  僕はトーコに聞いた。 「違う。君じゃない。君じゃないシンジ君・・・」 トーコの手が微かに震えていた。
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