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 突然、目も開けていられないようなまぶしい光に包まれた。  ようやくまぶしさがおさまり、私・竜崎香織はまぶたを開ける。 「えっ!?」  目の前にいたのは私。その私は、驚いたような顔をしている。というか、?  脳をフル回転させて直前のことを思い出す。  そうだ、クラスメイトの増井真也くんから言われた通りにしたのだった。「握手をして顔を見合わせてほしい」と。そうするとまぶしい光に包まれて……。  さっきまでの位置関係から推測する。私は教室の自席に座っていて、増井くんは立っていた。そして今目の前に見下ろしているのは座っている私自身。となると、どういうわけか私は増井くんの立場にいるようだ。  握手をしたままだったことにお互い気づき、慌てて引っ込める。  というより、何が起こっているのか増井くんに聞かなければ。 「ねぇ、ちょっとどういうこと?」  自分から出た低い声に確信を得る。そういえば、見える景色も普段と違って高い位置にいるようだ。  私、というか私と入れ替わったと思われる増井くんが立ち上がる。教室の隅に誘われたので、その通りにする。 「多分大したことないから」  入れ替わるというおよそ現実的でないことが現実に起きているにもかかわらず、「大したことない」とは。そう言い切る増井くんの根拠が知りたくて、私は黙ったまま続きを促した。 「今晩、寝るまでの間だけだから。明日にはもとに戻っているはずだから」  少し幻滅したのは内緒の話だ。きっと増井くんの中には根拠らしい根拠などないのだから。  とはいえ、実際に入れ替わってしまった今となっては信じるしかないのだろう。だってこういう時、増井くんはうそをついたりしないから。それに、増井くんは閉ざしていた私の心をとかしてくれた人だから。 「ほんと?」  見下ろす増井くんは、こくこくとうなずいた。 「だから、俺……じゃなくて、竜崎さん……いや、あたしはあたしであることを楽しむから。それで、俺……っていうか、ま、増井くんも同じように、ってか俺はダメなやつだから楽しめないかもしれないけど、きっともとに戻るから」 「わかった。今日だけなのね」  この経験がどういうことをもたらすのか、この時の私には知る由もなかった。
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