不穏

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「クソ……どこにも隙がねえ」 「こいつら化け物かよ……」  慌てて家具の下に逃げ込み、そこから銃で足元を狙い撃とうと試みるも、構えた銃ごと掌を踏みつけられて、方々から『ぐあぁ!』という絶叫が上がる。とにかく攻撃の手際が見事過ぎるというか、動きが早過ぎて、どう太刀打ちするかと考える暇さえ全くないのだ。そんな三人に阻まれて、二十人近くいた男たちがいとも簡単に次々と制圧されていった。  その傍らでは美紅を手に掛けんとしていた男と風が対峙していた。双方共に拳法使いだが、やり合うこと数回で風が勝利し、男は意識を刈り取られてしまった。 「美紅! 無事かッ!?」 「黒龍……!」  男を倒したと同時に風は愛しい婚約者を腕の中へと抱き締めた。ふと視界に入った彼女のスカートが切り裂かれているのに気がついて、驚きの声を上げる。 「メイ……何をされた……!?」  美紅もすぐに理解して、慌ててスカートを押さえた。 「大丈夫。これは私が自分でやったのよ」 「……貴女が? 自分で……?」 「ええ、そう。攻撃の邪魔になると思って仕方なく……。せっかく貴方に買っていただいた服でしたのに……」
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