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ごめんなさいと謝る彼女の両肩に手をやりながら、風は何ともいえない面持ちでその顔を覗き込んでしまった。周囲を見渡せば、確かに自分たちが乗り込んで来る前に倒されたと思われる男が三人ほど意識を失ったまま床に転がっている。
「まさか……こいつらは貴女がやったのか?」
「ええ……。子供の頃、父に勧められて拳法を習いに通っていたことがあって」
でもお陰で少しは役に立ったわという彼女の言葉に、風は一気に全身の力が抜けてしまう心持ちにさせられてしまった。
「は……、本当に……貴女のお父上には感謝しかないな――」
まさかこの華奢な彼女にそんな特技があったなどとは思いもよらなかった。ホッと肩を落とす風の元に、全ての制圧を終えた三人が集まって来た。
「兄貴、こっちは片付いたぜ」
「あ、ああ焔。遼二に紫月も、本当に助かった。感謝する」
三人は風が迎えに行った弟の焔とその友人たちだったのだ。
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