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「案の定だ。クローゼットに隠れていやがった」
「……ッ、何よ! 離して! 離しなさいってば!」
優秦にとっては風と同じく弟の焔もまた幼馴染に違いない。互いによくよくの顔見知りなのだ。
「離しなさいってば! 何よ! あんたなんか妾の子のくせに! 軽々しくアタシに触るなんて十年早いのよ!」
暴れる優秦の目の前へ歩を進めると、風は彼女の頬を軽く叩いた。
「……痛ッ、何すんのよ……!?」
恋する風に手を上げられて、驚愕というように肩を丸める。
「ふざけたことをしてくれたな優秦。俺の妻を騙してとんでもない企てをした上に、弟までもを罵倒するとは許しおけん!」
特には怒鳴るわけでもなかったが、その声音は怒りに満ち満ちていて、優秦は今にも泣き出さん勢いで瞳をしかめた。
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