不穏

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 その後、優秦(ユーチン)の父親、楚光順(チュウ グァンシェン)は娘の犯した罪の責任をとって、自ら周直下を離れたいと申し出た。光順本人は組織への忠義にも厚く、堅気に対しても横暴なことは一切しないというできた男であった為、ファミリーとして彼を失うことは正直なところ痛いといえる。が、しかし事態を重く見た頭領・周隼も色恋絡みの嫉妬が原因とはいえ、大勢の男たちに輪姦させてまで結婚を妨害しようなどという企てを許し置くはずもなく、光順の申し出を受け入れたのだった。  光順にしてみれば命を取られなかっただけでも大赦に値すると言って、二度とファミリーの前には顔を出さないと誓い、平身低頭で謝罪した。  かくして美紅の拉致事件は寸でのところで大事を逃れ、風ら若夫婦にとっても穏やかな日常が戻ってくることになったのだった。  その後、美紅の希望した武術の修行にはファミリー内から信頼の置ける師匠が選抜され、道場に通わずとも邸のある高楼内で稽古をつけてもらえることになった。他所に通わせてまた何かの企みに巻き込まれないようにとの風の配慮である。
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