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「メイ……? 何をするつもりだ」
「昔ね、父がまだ生きていた頃、趣味で水墨画を描いていたの。真似事だけど私も一緒に描いたこともあるのよ」
切なげながらもそう言って微笑むと、トルソーからドレスを外してテーブルの上へと広げてみせた。そして驚くようなことを口にした。
「黒龍、お願いがあるの。貴方の背中の刺青を見せてくださる?」
「背中の……? 構わんが、いったいどうするつもりだ」
「ドレスにも黒龍を刻むのはどうかしら。上手に出来るかは自信がないけれど私が描くわ。布地も絹だからちょうどいい……」
つまり絹本画と同じ感覚で描けるという意味なのだろう。
「この染みの形なら龍の動きに合わせて水しぶきが飛び散ったような壮大な感じにぴったりだと思うの」
湖から龍が飛び立つ瞬間をイメージした絵にすればいいのではないかと言うのだ。
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