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「メイ、俺のにも描いてくれないか」
「え……? でも貴方のは何ともなっていないのだし……」
わざわざ汚すこともないと美紅の方が驚きを隠せない。だが風はどうしてもお願いしたいと言って聞かなかった。
「描いて欲しい図柄があるんだ。それは貴女の肩に入れた黒蘭の花だ。貴女のドレスには俺の龍を、俺のジャケットには貴女の蘭を。これ以上ない夫婦の絆ではないか?」
その言葉に美紅は瞳を見開いた。
「貴方……。本当によろしいの?」
「ああ。もちろんだ! 二人で作り上げる世界にふたつとない最高の礼服にしよう」
そう言って手を取り、固く握り締める。若き夫の愛情が滲み出る言葉に、美紅もその美しい睫毛を濡らしながらうなずいた。
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