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「それはいい! 素晴らしい考えだ」
父の隼からも大絶賛を得て、新郎のタキシードには黒蘭の花模様を咲かせることに決まったのだった。
「焔、ちょっと頼まれてくれ」
美紅が筆を手に描き始めると、父の隼が次男坊の焔にそっと耳打ちをした。
「急ぎですまんが花屋に行って蘭の花を調達してきてくれないか? 色は三色、黄色と黒と白だ。俺たち家族、男三人の字にちなんだ蘭の生花をドレスの襟に添えてやりたい。ついでに俺たちも自分の字の色の蘭をコサージュとして胸に飾るぞ」
なるほど。蘭の花は周家の妻に贈られる証だというのは裏社会の人間なら誰もが知っている話だ。それに男三人の字に合わせた色がプラスされれば、家族が一丸となって美紅を大切なファミリーとして認めたという公の宣言にもなるといえる。勘のいい者ならば、以後彼女に手出しをするなという暗黙のお達しと取るだろう。
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