964人が本棚に入れています
本棚に追加
そうして着替えが済むと、シルクタフタのスカート部分に男々しく舞う黒龍図と、襟元をぐるりと囲んだ三色の蘭花が調和して、それは見事なものに出来上がった。敢えて水墨調の柄の入った生地で仕立てたかのようだ。美紅の美しさがより一層ドレスを引き立てて、壮観である。
「素晴らしいじゃないか、美紅よ! これこそまさに世界にたったひとつの愛に溢れたウェディングドレスだ」
父の隼が手を叩いて祝福の言葉を口にする。母の香蘭も感激に打ち震えながら『世界一誇らしい私の娘だわ!』と言って歓びの涙を拭ったのだった。
風と美紅の新郎新婦もまた隼から贈られた三色の蘭の襟飾りに感激し、調達に奔走してくれた弟・焔とその友人たちにも心からの感謝を述べた。
そうして式場に姿を現した新郎新婦を目にするなり、会場からはどよめきの声が上がった。まあ当然であろう。
最初のコメントを投稿しよう!