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「なんと……お珍しいお衣装ですな」
「え、ええ……。お式に柄物のドレスとは驚きましたわ」
参列者たちがザワザワと騒ぎ出す。美紅の描いた絵は確かに巧みではあったものの、よくよく見れば元は純白と思われる生地に墨で後から描き付けたことが明らかだ。
「アタクシはお母様の香蘭様とは社交界でよくご一緒させていただいているんですが、ドレスはオートクチュールの純白とうかがっていましたのに……」
「何かあったのかしら?」
「余程のご事情かしらね?」
誰もがふと脳裏に浮かんだ想像を口にし始める。
「まさかですけど、嫌がらせでドレスに墨汁でも撒かれたのかしら?」
「まあ恐ろしい……!」
「でも御嫡男様は方々から引き手数多で憧れの的でしたもの。有り得ない話じゃないかも知れませんわね」
「まあ……なんて酷いことを……! どなたの仕業か知りませんけど、やった張本人は随分と度胸がお有りですわね。仮に嫌がらせだとしても、周家を敵にまわすなんて正気の沙汰じゃありませんわ」
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