マフィアの花嫁

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 確かに二人の重鎮の言う通りである。祭壇に立つ新郎新婦は見るからに幸せそうで、どう見ても憂いの表情には見えない。嫌がらせなどどこ吹く風の如く、またそれに対して焦れるでも憤るでもなく堂々たる姿はあっぱれという他ない。  加えて花嫁の襟元と家族の胸に付けられた揃いの蘭花が、押しも押されもしない絆を物語っている。さすがは香港の裏社会を仕切るファミリーだ。それにふさわしい実に肝の据わった新妻だと、美紅の評判が轟くことになり、結果としては普通に純白のドレスとタキシードで行うよりも遥かに意味のあるものになったのは言うまでもない。  香港の裏社会を仕切る周隼を継ぐ次代頭領はおそろしく器の大きい、そして美貌も他の追随を許さないほどに美しく、またファミリーの誰からも大切にされて、ケチのつけようがない妻を娶ったと大絶賛されることとなったのだった。
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