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【番外編】素晴らしき贈り物
周風と高美紅の結婚式が行われる三月ほど前のことである。
楚優秦が引き起こした事件以後、風は美紅を一人で外出させることは控えていた。必要な物の買い出しなどは必ず自分が付き添うか、仕事で時間が取れない時には母の香蘭と護衛係を数人つけての重装備である。美紅もそんな風の心遣いを有り難く思っていたものの、ほんの少し買い物に出掛けるだけで何人もの側近たちを煩わすのは申し訳ないとの思いから、極力邸内で過ごすことにしていた。
「メイ、毎日家に篭りきりにさせてしまってすまない。出掛けたい時は遠慮せずに言ってくれな」
割合早めに帰宅できた日の夕食前、風がスーツを脱ぎながらそんな気遣いを口にする。高楼の窓から夕陽を眺めながら、美紅は婚約者の上着を受け取ってハンガーに掛けながらクスッと微笑んでみせた。
「ありがとう黒龍。でも大丈夫よ。実は私、今ちょっと夢中になっている趣味があるの。家でしかできないことだからちょうどいいのよ」
「趣味? それは初耳だね。いったいどんなことに夢中なのかな、我が奥方は!」
風が興味ありげに訊く。
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