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「ふふ、まだ内緒よ?」
奥ゆかしく口元に手を添えて微笑む仕草がなんとも愛しい。
「おや、俺にも秘密の趣味なのか?」
ますます気になるといったふうに風が眉根を寄せてみせる。
「うふふ、そうよ、旦那様。今はまだ秘密! でもあと数日で貴方にもお伝えできるわ」
人差し指を唇に持っていき、微笑む姿が可愛らしい。
「そうか。じゃあ楽しみにしているよ」
風はやれやれと笑いながら部屋着へと着替えを終えた。
「貴方! 今日のお夕飯は海老尽くしよ。お母様に新鮮な海老をたくさん戴いたの!」
「ほう? それは楽しみだな。食事の支度まで貴女にさせてしまってすまないが、貴女の料理は本当に旨いのでね」
これまでは邸の調理人たちが作ってくれていたのだが、美紅が住むようになってからは彼女の手料理の日も増えているのだ。とはいえ、朝や昼などは変わらずに厨房が用意してくれるので、美紅にとっては食事の支度も楽しみのひとつであった。
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