【番外編】素晴らしき贈り物

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「焔さんにもお世話をお掛けするわね。有り難いことだわ」  美紅はそんな義弟への土産として、こちらでしか手に入らないような懐かしい香港の乾物食材などを用意していた。鮑やフカヒレといった高級食材である。今の時代だからインターネットで何でも入手できるといっても、そこは気持ちである。弟や彼の側近を含め、邸の者たちへの土産などにも気遣ってくれる婚約者を風もまたより一層愛おしく思うのだった。  そうして香港を発つ前日の夜である。風が帰宅すると、すっかり支度の整ったスーツケースが綺麗に部屋の隅に並べられていて、準備も万端のようだ。こんな時に妻君がいると本当に有り難いと、風は感激に瞳を細めていた。と、ここで美紅が何やら後ろ手に頬を染めて、おずおずと近付いて来た。 「貴方、これ……どうかしら?」  少々遠慮がちに手にしていた物を差し出しては、恥ずかしそうに上目遣いで微笑んでみせる。それを見た瞬間に、風は驚いたように瞳を見開いてしまった。
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