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「これは……」
「この間から作っていた物ですの。貴方にと思って編んでみたのだけれど、もしかしたら少し大きいかも知れないの……」
ちょっと心配なのと言いながら手渡す。小さくて着られなかったらいけないと思ったそうで、サイズが合うかと不安そうに笑う。それはアラン模様が見事なセーターであった。
「まさか……これを俺の為に? 貴女が編んだのか……?」
「ええ。日本に行くのにちょうどいいかと思って……」
秘密にしていた趣味というのはこれのことだったのだ。
「なんて見事な……」
それは白を基調に、所々水色と墨色の模様が入っていて、ふっくらとしたとても暖かそうな一着だった。
「貴方のお名前の風は水色のイメージがあって、私……」
だから水色の糸と、それに字に合わせた黒も少し入れてみたのよと言う彼女を、風はセーターごと抱き締めてしまった。
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