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「おう、曹! ちょうど良かった。見てくれ!」
どうだ、素晴らしいだろうと風は得意顔だ。
「なに……! まさかお前、そのセーター……!」
「我が妻の手編みだ」
未だその妻を抱えたままで、ウンウンと自慢げに胸を張りながら鼻息も荒くする勢いだ。
「周風、こいつぅ……! この幸せ者!」
曹が片眉を上げながら肘でツンツンと突く。本来なら主人と側近にはあるまじき行為だが、風と曹とは幼い頃からの馴染み、もとい本人たちに言わせれば腐れ縁だ。立場以前に根っから信頼し合っている大親友なのだ。
「くぅー、羨ましいねぇ! 日本は寒いからってんで、奥方が編まれたのだなー! 実に羨ましいことだ!」
曹は冷やかしつつも、『似合ってるぜ!』と言って絶賛した。
「で? これから親父殿に自慢しに行くつもりだな?」
曹にはすっかり見抜かれているようだ。
「ご名答だ!」
風も笑い、美紅は未だ降ろしてくれない亭主の腕の中で茹で蛸状態だ。
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