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先生は企業法務を担当している。
でもたまに・・・他の弁護士先生が担当するこういう案件を、急に先生が担当することがある。
「僕の祖母は、裕福な家に生まれ婚約者がいました。
その婚約者に妊娠させられてしまい、家が潰れると婚約者に捨てられ・・・僕の母が5歳の時に亡くなりました。」
「・・・そうですか。」
「僕は独身ですし、僕自身は貴女のお気持ちを分かることは出来ませんが、幼い頃から母にこの話を聞いております。」
女の人が少し冷静になり先生を見詰めた。
そんな女の人を先生も見詰め、優しい笑顔で笑う。
「まだ旦那さんに、貴女が知っていることを知られていませんよね?」
「はい・・・。
たまたまスマホが開いていて、そこに新しいメッセージがその女から送られてきて・・・。」
女の人がそう答えると、先生が優しい笑顔のまま頷く。
「しっかりしましょう。
今は、しっかりしましょう。」
いつも優しいだけの先生は、こういう時は結構厳しくもなる。
「しっかり、確実に証拠を集めましょう。
貴女とお子さん3人が苦労しないでこれから生きていけるように。
それから、相手の女性への対応や旦那さんとの今後を考えていきましょう。」
「はい・・・。」
「今は、しっかりしましょう。
僕がいるので大丈夫ですから。」
この時の先生は格好良くて好き。
性格も良くてお金もあって仕事も出来る。
見た目まで良い。
そんな先生が女を見る目だけがない。
先生は・・・私に頑張り始めてしまった。
それは全然嬉しくない。
だって、私は良い女ではないという証拠だから。
過去の判例でそれが証明されているくらい、先生は女を見る目がない。
全然嬉しくない。
私は全然嬉しくない。
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