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「そんな所に座れないから!!」
土手の草の上に先生のジャケットが広げられ、そこに座るよう促された。
私がすぐに断ると先生は不思議そうな顔で私を見ている。
「後でクリーニングに出せばいいだけだから。」
「それ、明日私に頼むんですか?」
「そんなことしないよ。
たまにしてるけど。」
先生が笑いながら答え、広げたジャケットの横に自分は座った。
「女の子をそのまま座らせるわけにはいかないから座って?
ずっと立ってると後ろの人も見えなくなるからね。」
それを言われると何も言えなくなる。
でも・・・
「分かったけど、弁護士バッジは外して。
弁護士バッジがついているジャケットに私は座れないから。」
「こんなのただの印だけどね。」
「違います。」
私はしゃがんでからジャケットを持ち、先生の弁護士バッジを外し先生に渡した。
「先生が弁護士の先生であるという証明です。
その証明がクライアントを安心させ、しっかりさせるんです。
そんな大切な証明の上に私は座れません。」
そう言いながら先生を見ると、先生は優しく笑い弁護士バッジを受け取った。
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