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花火をほとんど見ないまま、先生にずっと優しく抱き締められていた。
私も・・・先生の背中に手を回していた。
そして最後の花火が打ち上がり・・・
大きな大きな花火の音で身体の底まで震えた・・・。
花火の音が消えると、周りのザワザワとした音が。
それを確認してから先生の心臓の音を最後に聞き、ゆっくりと離れた。
いや、離れようとした・・・。
私は先生の背中から手を離したのに、先生は離してくれない。
そんな先生の胸を両手で押す。
そしたら先生に少しだけ強く抱き締められた。
「先生、花火終わったけど。」
「これはカップルが成立したってことだよね?」
それには笑ってしまった。
「成立していませんよ。
花火の音が終わるまで抱き締めさせてって、先生が言ったんじゃないですか。
花火の音が終わったので、もう抱き締めるのは終わりです。」
私がそう言うと・・・
先生が片手をゆっくりと私の左の胸の上に置いた。
それには驚き身体が少し震える。
それを確認してから、先生は自分の胸の上にも手を置いた。
それから真面目な顔をした先生が、私の顔に近付いてきて・・・
私の顔を見詰めてきて・・・
「悠ちゃんの花火も俺の花火も、まだ音が鳴ってるけど。」
「そこの花火の音だとは聞いてないから・・・。」
「でも、ここの音も花火の音だと思ってたでしょ?」
それを聞かれると・・・何も言えなくなる。
だって、思っていたから・・・。
私もそう思っていたから・・・。
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