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第一章
教室の窓から見える景色に、私は目を奪われた。
昔から転勤を繰り返す父について日本全国、色々なところに行ったが、これまで通った学校の中で1番の景色だった。
「阿部 夢です。趣味は、読書です。よろしくお願いします 」
いつも通りの無難な転校の挨拶。
何回してきただろう。
5月という微妙な時期の転校生に教室からまばらな拍手が聞こえると共に、担任に窓際の1番後ろの席を案内される。
「隣の河合君は学級委員だから、何かあったら聞きなさい 」
担任にそう言われると、夢は隣の席の河合君に軽く頭を下げる。
「河合大我です。よろしくね 」
「…よろしく 」
軽く挨拶をすると夢は興味を無くしたように大我から視線を逸らし、窓の外を眺めた。
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