切り出したい。【偏愛シリーズ③】

切り出したい。

子供も生まれた今、
都合良く離婚を切り出したい。

振り向きもしない夫の背中に

「私とこの子をどう思っているの？」

「今日の結婚記念日だって何もないじゃない！」

詰め寄る私。
泣き出す子供。

一瞬、夫は眉間を摘んで左右に動かしたものの

「もう、離婚でいいか？」

と、アッサリと返事が返って来た。

ここでアッサリと返事をする訳にはいかない。
今まで集めていた浮気の証拠の数々。
やっとこの男から離れられる。
楽になれる。
だけど、貰うものは守らなきゃ。
ただで別れてたまるもんか。
夫にも痛手を被って貰わなきゃ、不公平よ！

婚姻費用や養育費、慰謝料の事もある。
弁護士を入れ、
あとは調停の場で話し合う事にした。

マンションから私は出ず、
ヒロに出て行ってもらう事になった。
あの人のことだから、
またどうせすぐに他の女を見つけるだろう。

ヒロは何枚も署名捺印入りの離婚届を置いて
出て行った。
愛のない結婚でも何だか情けなくて涙が溢れた。