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モテないわけではない。ナンパされたことはあるし、他校の男の子から連絡先を聞かれることもあった。それ自体は嬉しいことだったけれど、男性は琴葉にとって未知の生き物だった。緊張して上手く話せないし、見知らぬ男の子とどう接すればいいのかも分からなかった。
気づけば二十五歳。周りでは第一次結婚ブームが始まり、大学時代の友達が次々と結婚している。久しぶりに集まる友達の輪の中で、話はいつも仕事と恋愛のことだった。みんなが楽しそうに自分の恋愛話をするのを、どこか羨ましい気持ちで聞いていた。
もっと気軽な気持ちで付き合ってみたら?そう言う友達の言葉に、もう一歳若ければ勇気が出せたのに。そう言い訳している自分がいた。分かっている。歳の問題なんかじゃないことぐらい。でも彼氏いない歴=年齢は、自信とか勇気をなくさせるんだ。
「はあ……」
開かれたページには、カップルで行くオススメ先が書かれていた。いいな、好きな人と旅行なんて、楽しいよね。いつか行けるかな。まず出逢わないことには、始まらないけどね。
恋人で行くオススメ先のページを、飛ばすようにパラパラとページをめくった時だ。コインランドリーの自動ドアが開いた。入ってきたのは、男性だ。百七十はありそうな高い身長に、茶髪のマッシュヘア。青色の洗濯かごを片手に持っていた。
一瞬目が合い、ドキッと心臓が音を鳴らす。恥ずかしくなり慌てて目をそらすも、気になり後ろ姿を目で追う琴葉。同じ歳くらいかな、それにしても格好良い人だ。細身のスタイルなのに、筋肉はしっかりとついているような体つき。
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