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「凄く俺も好きなセリフだったので」
「いいですよね。主人公がどれだけ葛藤して生きているか、その一言で伝わってきて」
「誰でも葛藤してることって、ありますからね。共感する部分は多かったですね」
「……葛藤してるんですか?」
琴葉の問いに、男性は例えばの話ですと言った。それから二人は小説について、話し続けた。いつもゆっくりと過ごしていた五十分が、こんなにも早く感じたのは初めてだった。
「それじゃあ、また」
「はい」
コインランドリーの駐車場で、二人は別れた。自分の好きな小説の感想を話せて、琴葉は浮かれていた。嬉しいな、あの小説読んでる人に出逢って、こんなに話せるなんて。
「……あれ?私、男の人と普通に話せてる」
最近なんて父親か、職場の院長や患者さんくらいしか、男の人とは話していない。ましてやあんなに格好良い人となんて。初めて話したのに。好きな小説の話だからか、気づけば普通に話せていた。
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